回復する自然
流域人口が400万人を超える多摩川は、東京と神奈川という日本でも最大規模の人口を抱える都市の境界を成しながら東京湾に注ぐ。東京国際空港(羽田)が位置するのもこの都市河川の河口左岸のエリアだ。その多摩川で今、大きな変化が起きている。河川環境の改善が、水辺の生きものの回復という目に見える形で現われるようになってきたのだ。
遡るアユの群れ
なかでも注目されているのが、高度経済成長の時代を経て、多摩川の魚とは誰もが思っていなかった東京湾からのソ上アユ。平成に入ってから、魚のソ上を妨げていた堰に魚道を設けたり、産卵床を整備したり、水質が年々向上したこともあり、天然アユのソ上が年々増加し、平成24年には1,194万尾ものソ上が確認され人々を驚かせた(東京都島しょ農林水産総合センター調べ)。そして、その大きな転換点となったのは、東京オリンピック以降の東京都の本格的な下水道普及であるといわれている。多摩川の水辺に生きものの姿が確実に戻ってきていることは、俳優の中本賢さんの「ガサガサ探検(水辺の生き物取り)」などでも広く知られるようになった。
多彩な釣りが楽しめる中下流域
現在、多摩川で楽しめる釣りは数多い。渓流が広がる上流部でのヤマメ釣りやニジマス釣りはもちろん、中~下流域ではコイ釣りが盛んだ。なかでもカープフィッシングと呼ばれる、ヨーロッパ式の最新タックルとボイリー(エサ)を使ったコイ釣りでは多摩川が一大発信地となっている。水温が落ちつきコイの活性が高くなる秋のコイ釣りにもうってつけだ。下流域では「落ちアユ」と呼ばれる、産卵のために下流へ移動するアユを捕食するために川に入って来るシーバス(スズキ)をねらうルアーフィッシングもハイシーズンを迎える。さらに最近はクロダイをルアーでねらう釣り人もいる。
テナガエビの滋味に舌鼓
また秋は、最下流域でのハゼ釣りも楽しい。そのほか、近年人気を高めているのが梅雨のテナガエビ釣りだ。昔から江戸前の釣りとして江戸の庶民に人気のあったテナガエビ釣りは、現在でも東京湾に注ぐ荒川、隅田川、江戸川などで楽しめるが、多摩川はその一角を成す人気河川となっている。おもな釣り場はハゼとほぼ共通し、最下流に架かる大師橋から丸子橋辺り。釣り道具は玉ウキを使った1本バリ仕掛けにアカムシのエサといたってシンプル。日中は岩陰などに隠れているので、消波ブロックや捨て石が入っている場所を見つけて、陰の部分に仕掛けを入れてねらいたい。釣ったテナガエビは、これが大都市のどまん中で釣れたものかと驚くほど滋味豊かで美味しく食べられる。
この釣り場へのアクセス
羽田空港から多摩川下流部へは京急線などを利用。大師橋、六郷橋、多摩川大橋、ガス橋などの前後がおもなポイントになる。
釣り場情報
〈多摩川〉
シーズン |
4~7月(テナガエビ)、6~10月(シーバス)、7~10月(ハゼ)、コイ(通年)、クロダイ(5~9月) |
問合先 | 上州屋川崎東口店(http://www.johshuya.co.jp/shop/shop.php?s=23) |
- ガス橋から上流のコイの遊漁には日釣券が必要
- 釣り場情報は2014年度のものです。