第2回環境にかかわる有識者との対話
2020年度の主な活動
第2回環境にかかわる有識者との対話
2020年9月23日に開催した環境にかかわる有識者との対話をもとに、「ANAグループ次期環境計画(案)2021-2030年度」を策定しました。本計画の成案に向け、ご意見や助言をいただくためダイアログを開催し、2050年のゴールから逆算した課題抽出や定期的な情報開示、国際的にイニシアティブの活用などについてアドバイスをいただきました。
テーマ:ANAグループの次期環境計画策定について
日時:2020年12月22日(火)14:00から16:00
ご参加いただいた有識者の皆様
池原 庸介氏(WWFジャパン 自然保護室 気候・エネルギーグループ グループ長)
日比 保史氏(一般社団法人 コンサベーション・ インターナショナル(CI)ジャパン 代表理事 兼 CIバイスプレジデント)
全体コーディネート
石田 寛氏(経済人コー円卓会議日本委員会事務局長)
ANAホールディングス(株)
伊東 裕(代表取締役 副社長執行役員 サステナビリティ推進担当)
宮田 千夏子(執行役員 サステナビリティ推進部長)ほか
伊東副社長
ANAグループでは、Postコロナを見据えて再成長を目指し、これまで以上にESG経営について真剣に取り組んでいく。また、航空機の運航で発生するCO2排出量を2005年度比50%に削減する環境目標を打ち出していたが、菅政権以降日本政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことで、2030年の環境目標とあわせてどのように調整していくべきかを課題としている。今回のダイアログを通し、環境の変化に合わせつつも、ANAグループとしての‘ぶれない軸(芯)’を持ち、2030年中期環境計画のストーリーを描けるように参考にしたい。
宮田執行役員
コロナ以前に策定した2050年度目標の対し、運航においてはSAFの供給量やコストが課題であり、また、クレジットでの対応が社会的な地位が確立していない中、不透明な状況が続いている。運航以外でも新たな再生可能エネルギーの出現など後押しする材料があれば、速やかに対応できるような体制を整備する必要があると認識している。ただし、2030年に関してはどこまで踏み込んで目標を設定していくべきか模索している。ANAグループとしては、他社との差別化を図る意味合いでも、サステナビリティのブランディング効果を発揮するために、環境の変化に応じ、3から5年の時間軸で検討をしていきたい。また、こうした環境課題の解決は、個社では限定的な対応しかできないため、ロビーイング活動をし、他社や政府などのアクターと連携しながら働きかけていくことが重要だと認識している。
WWFジャパン 池原氏
ここ最近では外部環境が著しく変化しており、瞬く間に覆されてしまうケースが多々ある。まずは目標を立て、3から5年の期中であっても臨機応変に見直し対応できるような体制を構築することが大事だと考えている。
具体的なアクションとして、
航空機以外のCO2排出量削減
- 再生可能エネルギーを活用したRE100を宣言
食品廃棄の削減
- サプライチェーンを俯瞰したCO2排出削減
スコープ(範囲)を広げることで、SDGs8&12以外に、SDGs13, 14, 15へと関連付ける。
航空機の運航やそれに伴うCO2排出量削減
- Well to Wake(WTW)=「SCOPE1,2」+「SCOPE3」
SBTをより重視した環境施策を目標に据えていく。
環境目標への‘ぶれない軸(芯)’として、CO2排出削減だけではなく、水や森林などの自然資本ベースに則ったSBTを重視していく姿勢を示していくことが重要。クレジットの導入に関しては航空業界としてゼロエミッションの実現には必須であることを業界全体でアクターたちに働きかけていくことも一案である。なお、SBTiも目標の外数(削減してもなお残る排出)に対しては、クレジットの活用を認めている。RE100を裏付けとした数値を打ち出しておくことも根拠付けや姿勢が明確になる。
サステナビリティのブランディング効果を高めるため、トヨタ自動車のようにステークホルダーとともに、バリューチェーン全体で脱炭素に向けたベクトル合わせをすることが重要。ANAグループでも2050年の目指すべき姿を打ち出し、サプライヤーを巻き込んだマネジメント体制を構築することが得策である。
目標のタイムラインとしては、2050年は波及効果、2030年はその実現確度を高めるような働きかけを続け、状況に応じて取り組みをブラッシュアップすることが重要である。
CIジャパン 日比氏
環境目標に対し、‘ぶれない軸(芯)’を持ち、その姿勢を世に示していくことが、重要なプロセスと考える。
たとえば、サステナブルな食材の調達に関しては、ANAグループが率先してサプライヤーを巻き込み、地域の農業・漁業をサステナブルなものへと転換していく支援をするなど、総合的にアプローチすることで社会全体にポジティブな行動変容を促すことができる。日本でのMSCやFSCの供給量不足は、積極的にサプライヤーに働きかけていき、社会全体に貢献できるようにしていくことが、企業が社会に果たすべき役割になってきている。
また、空港で使用する特殊車両などは直ちにEV化が難しいということだが、グロープ企業内で使用する一般車両については出来ることは多い。温室効果ガスの排出削減については、ミレニアルやZ世代など2030〜2050年頃に主要な顧客層となってくる世代への訴求を念頭に、ANAグループとして早い段階でカーボンニュートラルにコミットしていくことが重要である。
目標設定としては、SBTを用いる手法には妥当性がある。そして、裏付けとなるエビデンスを示しながらもその努力していく姿勢を打ち出すことである。
日本は、国際的な仕組みやルールづくりに実質的に関われていないことが多い。そのような場にANAグループとしても積極的に関わっていくことも検討してもらいたい。