ESGにかかわる有識者との対話
2020年度の主な活動
ESGにかかわる有識者との対話
テーマ:「新型コロナウイルス感染拡大後の意識変化に伴う、ANAグループに求める期待と懸念について」
時期:2020年6月から7月
実施方法:アンケート形式のヒアリング
ご回答いただいた有識者の皆様
カミーユ・ル・ポルス氏(Lead, Corporate Human Rights Benchmark, World Benchmarking Alliance)
リシ・シャー・シン氏(Specialist in Global Value Chains)
プヴァン・セルヴァナサン氏(Chair, Bluenumber Foundation and Former Member of the UN Working Group on Business and Human Rights)
日比 保史氏(一般社団法人 コンサベーション・インターナショナル(CI)ジャパン 代表理事 兼 CIバイスプレジデント)
東梅 貞義氏(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン (WWF ジャパン)事務局長)
荒井 勝氏(NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム 会長)
総括
石田 寛氏(経済人コー円卓会議日本委員会事務局長)
総括

事務局長
石田 寛氏
COVID-19の影響に伴い、これまでの常識が通用しない世界になり、一人ひとりの価値観の変容や社会のしきい値を的確に捉えるために、こうした対話を通じて、財務と非財務情報を経営のかじ取りに活かしていくことが大事です。ここ数年は世界の価値観の変容ショックで経営の立て直しが余儀なくされますが、その後2030年と2050年のANAグループのESG中長期目標に向けて、今から何をすべきか腰を据えて体制(人権尊重と環境配慮)を整え、レジリエントなビジネスモデル構築に向けて歩み続けていくことを期待しています。
ANAグループでは、COVID-19下において、新たなESG課題の特定作業プロセスの透明性を図り、ステークホルダーとの信頼性の向上を目指した“Quality Relationship”を図っていくことです。

カミーユ・ル・ポルス氏
(Camille Le Pors)
COVID-19の状況下、企業はパンデミックに関連する人権リスクを管理するため適切な措置を講じることが期待されており、少なくともこうしたパンデミックにおいて、人権尊重のコミットメントや責任体制の明確化が必要です。よって、企業はCOVID-19危機も考慮した人権リスク評価や課題を特定し、対処するための一連の人権デューデリジェンスを行うことが重要です。ANAグループのように多くのサプライヤーを抱えている企業は、サプライヤーを保護するために「責任ある調達」を実践することを優先すべきです。また、企業は、COVID-19に関連する苦情も包含し、報復の恐れのない効果的な苦情処理メカニズム策の提供が求められます。
今回のCOVID-19危機は、世界に持続可能で包括的な開発の必要性を改めて示すとともに、「より良く再復興する(Build Back Better)」機会を提供するものです。つまり、企業が基本的な人権を保護し、短期的な経済的利益と長期的なニーズを一致させ、SDGsの継続的な勢いを確かなものにすることで、社会と経済のレジリエンスがより高まります。
[有識者コメント原文] CHRB WBA PDF新しいウィンドウで開く。外部サイトの場合はアクセシビリティガイドラインに対応していない可能性があります。

Specialist in Global Value Chains
リシ・シャー・シン氏
(Rishi Sher Singh)
ANAグループが、人権方針、トレーニングおよび人権インパクトアセスメントを通じて、国連のビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)に基づいて取り組んできたことは高く評価しています。しかし、ソーシャル・ディスタンスの必要性がここ数ヶ月間は続く状況下で、厳しいビジネス環境とバリューチェーンにおける従業員や旅行者、サプライヤー、Rights-holders*などとの限られた対話のもとで、効果的な人権デューデリジェンスを行うにはさらなる工夫が必要となります。特に旅行者への影響については、航空機を使った旅行が再び開始されると、航空機内だけでなく空港も含めて、衛生状態の管理や様々なソーシャル・ディスタンスの確保が必要になります。
- Rights-holders(ライツホルダー):権利保有者。企業活動などの結果として実際に影響を受ける人々。
[有識者コメント原文] Specialist in GVC PDF新しいウィンドウで開く。外部サイトの場合はアクセシビリティガイドラインに対応していない可能性があります。

Bluenumber Foundation and Former Member of the UN Working Group on Business and Human Rights
プヴァン・セルヴァナサン氏
(Puvan Selvanathan)
今日の世界は、これまでと違う別の場所です。私たちは今までと同じグローバル社会にいますか。
私たちの「新たな日常(ニューノーマル)」は、従来とは大幅に異なるものになるでしょう。なぜなら、私たちはおそらく人生で初めての経験をしているため、ここで見つけたことを見失わないように努める必要があります。ANAグループが、より小規模な海外渡航のニーズや接客サービスの変化にどのように対処するかは、新しいアプローチを進めていく中で何が重要かを見出すケーススタディになります。従来影の部分にあったものに、今度は光が当てられます。取捨選択の決定をするには、何が無駄で何に価値があるかをよく調べる必要があります。
[有識者コメント原文] Bluenumber Foundation PDF新しいウィンドウで開く。外部サイトの場合はアクセシビリティガイドラインに対応していない可能性があります。

インターナショナル(CI)ジャパン
代表理事 兼 CIバイスプレジデント
日比 保史氏
欧州ではGreen Recovery Alliance*に37社、28業界団体が参加し、グリーン・リカバリーの動きが活発です。近い将来、従前のビジネスへ戻る企業は、ポストコロナ社会の構成員としては不適格とされるでしょう。コロナ禍において、CO2排出量を含めた環境負荷が期せずして一時的に地球規模で低減しましたが、ANAグループのポストコロナからのリカバリーでは、この意図せず削減されたCO2排出量を元に戻さない“do no harm”を軸に、中長期的にフライト中のあらゆる負荷を“net zero”とする航空サービスへの転換の足掛かりにすべきでしょう。環境目標を緩めるのではなく、むしろこの機会を捉えて取り組みを強化し、早い段階でステークホルダーに向けてコミットすることが重要です。
- Green Recovery Alliance:新型コロナウイルス感染拡大後の欧州経済の回復策を、気候変動対策などの環境・社会面を重視したものにするために発足した欧州議会が主導するアライアンス。
[有識者コメント原文] コンサベーション・インターナショナル・ジャパン PDF新しいウィンドウで開く。外部サイトの場合はアクセシビリティガイドラインに対応していない可能性があります。

ジャパン(WWF ジャパン)
事務局長
東梅 貞義氏
ポストコロナ社会に向けて、各国政府が「グリーン・リカバリー」を政策に取り入れており、ビジネスではこれまで以上に持続可能性の向上が求められています。
WWFは「グリーンかつ公正な回復」「野生生物の過剰利用」「土地利用と食料システム」という社会課題を認識し、見直す必要があると提言しています。ANA グループにおいては、温室効果ガス削減を根本から見直し、脱炭素社会実現のためのScience Based Targetsイニシアチブ*(SBTi)に基づいたポストコロナ航空ビジネスの長期プランをいち早く策定することを期待しています。また、野生生物由来の感染症防止のためには違法取引への対策拡大が求められるほか、資源利用ではプラスチックの削減・回収・再利用やパーム油や木材・紙等の原料の持続可能な調達が期待されています。
- Science Based Targetsイニシアチブ: WWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアチブ。気候変動による世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ、2℃より十分低く抑えるために科学的知見と整合した削減目標の設定を推進する。
[有識者コメント原文] 公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン) PDF新しいウィンドウで開く。外部サイトの場合はアクセシビリティガイドラインに対応していない可能性があります。

日本サステナブル投資フォーラム
会長
荒井 勝氏
投資家が現在注目する課題の一つが、企業によるサプライチェーンへの支援、分散、安定的な維持です。グループやサプライチェーン企業の従業員の雇用や安全、健康、働き方、満足度の課題も浮き彫りになっています。また、顧客や社員のデータなどのAIによる分析と利用では、外部と提携するようになっているため、データ・セキュリティのみならず、データ・ガバナンスの観点も投資家から注目されています。世界の航空業界はしばらく厳しい状況が続くと予想される中、ANAグループが、自社にできることを再度問い、アフターコロナ時代のレジリエントな企業として、新たな成長の機会を見出すよう期待しています。
[有識者コメント原文] NPO法人日本サステナブル投資フォーラム PDF新しいウィンドウで開く。外部サイトの場合はアクセシビリティガイドラインに対応していない可能性があります。