人権デューディリジェンス
ANAグループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」において詳述されている手順に従って、人権デューディリジェンスの仕組みを構築しています。人権デューディリジェンスとは、自社が社会に与えうる人権への負の影響を防止または軽減するために、予防的に調査・把握を行い、適切な手段を通じて是正し、その進捗ならびに結果について外部に開示する継続的なプロセスを言います。
人権インパクトアセスメントの実施
2022年7月に、ANAグループが展開・実施する事業において、人権および環境の観点で潜在的なリスク要因となる懸念事項がないか、全社横断的に議論・確認する場を設けました。第三者機関であるCRT経済人コー円卓会議日本委員会*1・コンサベーションインターナショナルジャパン*2 立ち合いのもと、35を超えるグループ社・社内部署の担当者が集まり、潜在課題を抽出しました。その後、国内外の有識者と対話し、今後注力すべき人権・環境の新課題を特定しました。
- *1. ビジネスを通じて社会をより自由かつ公正なものとすることを目的としたビジネスリーダーのグローバルネットワーク(NPO)。主に人権尊重に向けた企業の取り組みを支援。
- *2. 世界29か国にオフィスを構え、気候変動や生物多様性に関わる政策提言等行う国際NGOの日本支部。
人権テーマの特定
2022年に実施した人権・環境デューディリジェンスワークショップで抽出した潜在課題を基に、従来の4つの重要な人権テーマに環境の観点と新規事業を展開する中で想定される新たな人権リスクを加味して以下5つの新たな人権テーマを設定しました。これらの人権テーマは、自社の社員や顧客だけでなく、ANAグループの委託先・調達先企業で働く従業員や移民労働者、地域社会も対象にしています。また、女性やお子様はもちろんのこと、先住民の方々も対象としています。2023年以降はこれらのテーマに基づき行動しています。
テーマ 1 |
国内外の業務委託先やベンダーで働く外国人労働者の労働環境把握 外国人労働者の労働環境の把握対象をグループ会社からその先の国内外の業務委託先やベンダーまで拡大し、労働環境に問題が認められた際には速やかな改善に努めます。 |
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テーマ 2 |
サプライチェーン上における人権課題・環境負荷の特定 機内食等に係るサプライチェーンマネジメントのみならず、事業全体でのサプライチェーンマネジメントの強化が求められます。また、人権だけでなく、環境の観点でもリスクがないかを確認することが求められます。 |
テーマ 3 |
航空機を利用した人身取引の防止 エアラインが提供するサービスが意図せず、第三者によって人身取引に利用されてしまうことがないように防止の取り組みを進めるとともに、社外発信を強化することにより社外啓発も促進していきます。 |
テーマ 4 |
お客様情報の保護とプライバシーへの配慮 エアライン・ビジネスに限らずプラットフォーム・ビジネスにおけるお客様の個人データの利活用について、法令遵守の範囲に留まることなく、社会の要請等にも応じた配慮を行っていきます。 |
テーマ 5 |
AIやメタバース等のサービスを提供する際の人権配慮 インターネット上に構築された三次元の仮想空間やそのサービスのなかで今後起こりうる人権リスク(誹謗中傷・他者へのなりすまし等)について想定したうえで、対処していきます。 |
なお、2022年までの取り組みは以下4つの重要な人権テーマに基づき、情報を開示しています。
- 日本における外国人労働者の労働環境の把握
- 機内食に係るサプライチェーンマネジメントの強化
- 航空機を利用した人身取引の防止
- 贈収賄の防止
テーマ4については、継続的な人権テーマにはしないものの、引き続き適切な対応をとっていきます。