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もっと隙間なく、バランスよく!パズルのようなフレーターロードプランナーの仕事 那覇をハブに、日本からアジアへ。緻密で豪快な作業が行われる、世界的物流拠点 多くの物を運べるように、軽さを追求した飛行機のバランスは繊細だ。前後左右に荷物の重量を平均的に分配し、効率化を図る必要がある。なにせ、それだけでひとつの仕事が成立するほどなのだから。その仕事の名はフレーターロードプランナー。聞き慣れない言葉だろう。だが彼らもまた、安全な飛行に欠かせない“立役者”なのである。 文=吉州 正行  写真=小島 マサヒロ #17 那覇空港国際線貨物 フレーターロードプランナー 森田 涼子

夜中に始まる大仕事!寝ている間に荷物を届けるために 深夜0時を回って、閑散としていた施設内もいよいよ活気づいてくる。ここ沖縄県は那覇空港の一角にある貨物エリア。あと2時間もすれば国内の各空港から貨物便がひっきりなしに到着するという。その数およそ20便。200人体制で、それらを迎え入れる準備が始まるのだ。「かれこれ5年やっているので、夜が遅いことにも慣れました。お店が空いている昼間を自由に使えるので、むしろ充実しているんですよ」ちょっと緊張気味に、とはいえ人の良さがにじみ出た印象の森田涼子は、その一連の作業の中でフレーターロードプランナーという役割を担う。「荷物の情報を事前にもらったら、『それらを仕分けしてどう組み付けし直すか』を考えます。そのうえで、飛行機のどの場所にどの荷物を載せるか、つまり“搭載プラン”を作る仕事なんです」言い換えれば「渡された荷物をどう渡し直すか」を考える立場である。なにせ貨物の多くは沖縄に宛てて送られたものではない。沖縄を経由し、アジア各国などへと送られる。那覇空港はいわばそのハブとしての役割を担うのだ。
様々な要素から最適解を求めるパズルのようなプランニング 荷物は実に様々だ。金属や半導体のほか、魚や野菜といった食品類まで。大事なことは、いかに正確かつスピーディーに届けられるか。「到着の1時間くらい前に何が載っているのかの情報が降りてくるので、それらの情報を基に考えます。荷物の仕分けに90分、積み直しに90分、最短で3時間程度で作業を完了させなければいけません」といっても、ただ載せ替えればいいというわけではない。繊細な技術で成り立つ飛行機は、繊細な重量バランスを考えなければならないのだ。前後左右平均的に、重心が丁度中央に来る必要がある。「そのほかにも、危険物がある場合は荷物同士を離した配置にする必要があったり、優先的にお客様にお渡しする荷物はすぐに降ろせる位置に置きます。また届く荷物は一度に揃うわけではないので、到着時間と作業時間のバランスも考えなければなりません。そのうえで、手を動かすスタッフの手間を減らす工夫も必要なんです」パソコン上で暗号のように表示された集約情報のコードを読み解き、再び当てはめ直す。複合的に絡み合う様々な要素を加味したパズルのような仕事なのだ。それゆえ、一晩で2便の作業が限度なのだとか。「でも、意外に思われるかもしれませんが、私、理系ではなく文系なんです(笑)」
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アジアへの窓口を那覇に官民共同で作る国際物流特区 日本全国の空港で夜ごとこのような作業が行われているわけではない。那覇空港が特別なのだという。もともと行政が国際物流特区を設けようとしたことに端を発する。もっとも周辺アジアに近い24時間稼働可能な国際空港として、那覇に白羽の矢が立ったのだ。その運営を受け持つのがANA Cargoなのである。「開業から5年経ちますが、段々と便数が増えていますね。きっとその利便性を感じていただけているのではないかと思います」端的に言えば、今朝北海道で獲れた海産物がその日の夜に那覇に届き、積み替えられてアジア各都市に翌朝9時に届き、さらに昼には地元のレストランに届けられるという。アジア12地点へ65路線で行う柔軟で高速な輸送サービスは、ANA Cargo にしかできない大きな強みだとか。「早さと正確さ、安全面においては世界的に見てもすごく高いレベルにあると思います。そのあたりを自慢に思うスタッフは多いと思いますね」
安全性のうえで効率化を図る。細腕プランナーの心意気  森田を始め、那覇空港のANAグループで働く女性は、鮮やかな色合いのかりゆしを着ているスタッフが多いという。「実はこれ、那覇だけの制服なんですよ」森田は地元である沖縄のことが大好きだとばかりに笑う。別段、飛行機に興味があるわけではなかったという。「少しでも地元の発展に貢献できれば」という気持ちで、東京から帰郷してこの職を選んだのだ。「でも、フレーターロードプランナーという仕事については、まったくイメージが湧きませんでした。成田空港で研修をしたんですが、国際貨物や通関業務をしたり、貨物の種別や飛行機の構造について学びましたね」自分が作業に関わった飛行機が飛ぶことに、他では得がたい感慨を抱いたというが、一方で最初のころは戸惑いや失敗もあった。「時間がかかってしまった効率の悪いプランは、やっぱり自分のなかでの失敗ですね。最終的には作業効率よりも飛行機の安全を最優先しなければいけないですから。安全を保ったうえで速やかにプランを作れて、多く搭載できたときは、やっぱり『よしっ!』って思えるんですよ」

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