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空の道を切り開く!新規路線の海外支店長という重責 見知らぬ土地。期限は半年。その日に、青い翼を迎え入れる! ANAの国際線に、この6月、新たな路線が加わった。成田と全米第4の都市、ヒューストンを結ぶ便だ。航空会社にとって新規就航は、いわずもがな一大事業。米国でANAの新たな道を切り開いたリーダーシップとは?文=吉州 正行  写真=小島 マサヒロ  #23 ANAヒューストン支店長 名川 譲

国際線のプロが挑むアメリカへの新規就航路線 発着回数では世界で9番目に多いというヒューストンのジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港は、さすがアメリカと思うばかりの広さだ。到着した取材チームを出迎えてくれたのが、ANAヒューストン支店長の名川 譲である。「人口が全米4位の大都市で、米国内外5000社以上のエネルギー関連企業が拠点を構えることから、『世界のエネルギーキャピタル』とも呼ばれます。また郊外にはNASAジョンソン宇宙センターや、最先端の医療技術を誇る世界最大級の医学医療施設テキサスメディカルセンターがあります。日本人居住者は少ない反面、日本との繋がりが大きいほか、100社以上の日本企業が進出しています」こんな発言からもわかるとおり、名川は実に聡明な印象だ。かつては航空会社間の提携推進と国際線の新規開拓や事業拡大にも関わり、シンガポールでマーケティングとセールス及び総務を担当。帰国後は国際線を中心に営業をサポートしてきた。いわば国際線のプロだ。「昨年内示があったときには驚きましたが、まだANAとして未開拓のテキサスに行ける魅力を感じましたね。ゼロから支店を立ち上げることに加え、半年後の6月12日に必ず就航することが決まっていたので、重圧はありました」
手続きは仕事のみならず。日々、アメリカでの拠点作り ANAのパートナーであるユナイテッド航空のハブ空港であり、アメリカ南部の州と中南米路線の拠点であるヒューストンは、日本からの投資が拡大しているメキシコや中南米への乗り継ぎなどの需要が高いとか。「アメリカ南部のニューオリンズやフロリダなどの観光地は魅力的です。反面、日本からは『遠い』といわれてきました。アメリカの航空会社ばかりが就航しているこのエリアにANAが就航することで、日本からの利便性は確実に向上します。非常にやりがいを感じていました」高いモチベーションを抱き、本格的にアメリカに赴任してきたのは就航の約3カ月前。「私含めて5名のスタッフで始めました。ここに住むのはみな初めて。同じ国のアメリカとはいえ、すでに就航している西海岸、東海岸、中西部と比較して、南部のテキサス州は気候や文化が異なり、戸惑いもありました」小さな仮事務所に机とPCだけで仕事を始め、やがて空港と市内に事務所を開設。ハード面で設備を整えると同時に、現地職員の採用とトレーニングを実施。組織の充実を図った。「公私共に多忙を極めました。しかし力を合わせてコツコツ形を作ることに、忙しさを忘れるほど充実感を感じていました」
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現地はANAの就航を好意的に受け止める 今でこそ国際線は自由な乗り入れが可能だが、かつては国をまたぐ就航に国家間の枠組みが必要だった。名川はそんな90年代から、国際線の基盤を作ってきた。それだけに、勝手知ったるもの…というわけでもないらしい。「国際線に関わる業務を広く経験してきたことは立ち上げに役に立ちましたが、新規就航には安定したオペレーションを行う基盤作りが大事。私よりはるかに精通した専門家の駐在員が中心となり、チームワークで乗り切りました」おおらかで人なつこいヒューストンの人々の気質にも、ずいぶん助けられたという。「人と物が行き来してきた拠点なんです。多様な人種や文化を受け入れる懐の広さがあるんでしょう。大きなものを好み、広大な土地に人々が悠々と暮らしています。新規就航や立ち上げに際しては、いろいろ手続きや仕事の進め方で波長が合わないこともありましたが、最終的には受け入れていただけたと思います」特に嬉しかったエピソードがあるという。「就航前日にヒューストン空港公団主催で歓迎会を開催いただき、ヒューストン市長自ら、就航を開始する6月12日を、ヒューストンと日本の更なる関係強化を祈念して『ANAの日』と宣言していただいたんです」
アメリカ、世界で、ANAの名前を広めるために 「就航当日、これまで準備を重ねてきたヒューストン空港に、定刻の朝9時半前、青い翼のB777-300ER機が滑走路に滑り込むように着陸したときは、感無量でした。日本では見慣れた青い機体ですが、こちらに着任してからは見ることがありませんでしたので。青い翼に向けて、現地の空港公団が用意した放水アーチで歓迎してくれたときには、思わず自分もお客様と一緒に拍手をしてしまいました」3カ月にわたる滞在を経て、晴れて飛行機を迎え入れる日。もの珍しげに写真を撮る現地やお客様の人々の姿を見るにつけ、名川の感激もひとしおだったに違いない。だが、これで終わりというわけではない。実は現在も多忙を極めているのだ。「東京とヒューストンをつなぐことのみならず、南部を中心とした米国の各都市、さらには中南米とアジア各国を双方向に、ビジネス・観光・貨物と幅広い分野で結ぶ路線に育ってほしいですね。今は、その種まきをする期間だと考えています」営業・マーケティングが目下の名川の仕事だ。空港のオペレーションのサポートを挟みつつ、午前中は支店のあるダウンタウンから空港まで向かい、午後は空港から支店またはお客様のいる企業への訪問。1日だけで100km以上運転することも多いという。だが苦にはならないという。こうした日々の活動が、今後のヒューストンと日本との人と物の行き来と関係強化はもちろんのこと、ANA、ひいては日本のプレゼンス向上につながると信じているのだ。だが熱意を傾けるあまり…。

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